製造AXとは。製造業のAIトランスフォーメーションを現場から進める方法

製造AX(製造業のAIトランスフォーメーション)とは何か、DXとの違い、最初に効く業務、進め方を解説。旭鉄工の事例を交えて紹介します。

製造AXとは?現場から進める方法(製造AX/86.4% 業務で生成AIを使う企業)
Category
製造業
Updated
2026.09.26
Reading
約5分
Author
株式会社TERRAISE
Supervisor
舟橋 遼亮(代表取締役CEO)

「製造AX」という言葉を目にする機会が増えました。DX(デジタルトランスフォーメーション)はよく聞くけれど、AXとは何が違うのか。この記事では、製造AXの意味と、現場から進めるための考え方を整理します。

AXとは何か

AXは「AI Transformation(AIトランスフォーメーション)」の略です。生成AIを中心とした技術を使って、業務のやり方や組織のあり方そのものを変えていく取り組みを指します。「製造AX」は、その取り組みを製造業の現場に適用したものです。

似た言葉に「DX(デジタルトランスフォーメーション)」があります。DXは、業務のデジタル化・データ活用を中心に据えた変革を指すことが多く、システム導入やペーパーレス化がその代表例です。一方AXは、生成AIという「判断や文章生成を伴う作業まで担えるツール」が使えるようになったことを前提に、これまで人にしかできなかった工程——手順書の作成、報告書の下書き、資料の要約や構成——までを変革の対象に含める点が特徴です。DXの延長線上にAXがある、と捉えるとわかりやすいかもしれません。

DXは業務のデジタル化・データ活用が中心で、代表例はシステム導入やペーパーレス化。AXは生成AIを前提に、手順書の作成や報告書の下書きなど、これまで人にしかできなかった工程まで変革の対象に含める
FIG.01DXとAXの違い

なぜ今、製造AXなのか

総務省『令和8年版 情報通信白書』(2026年7月24日公表)によると、業務で生成AIを利用している企業は86.4%にのぼります。2024年度の55.2%から、2年で31.2ポイント伸びました。一方で「組織的な取組はない」と答えた日本企業は約27%(米国は1.4%)です。生成AIは現場に入りました。しかし、組織として使い方を決め、業務プロセスに組み込むところまでは進んでいない企業が多いのが実情です。

製造業の現場でうまくいかない理由は、たいてい次の3つに整理できます。

  • 知識の壁 — 研修は受けた。でも翌週には使い方を忘れている
  • 実装の壁 — 誰かがツールを作った。でも業務プロセスに組み込まれておらず、誰も使っていない
  • 定着の壁 — 一部の人だけが使っていて、部署全体の業務は変わっていない

製造AXを進めるということは、この3つの壁を越えて、実際に現場の業務プロセスを変えるところまで行うということです。

製造現場で最初に効く業務

製造AXは、いきなり全社変革を狙う必要はありません。まず1つの業務で「AIでできた」という事実を作ることが、最短のスタートです。製造業の現場でよく候補になるのは、次のような業務です。

  • 作業手順書 — 熟練者の作業を言語化し、写真やキャプチャを添えて文書化する業務
  • 日報 — 現場の作業内容や進捗を記録し、集計・共有する業務
  • 不良対策書 — 不良の現象・原因・対策を整理し、所定の書式にまとめる業務
  • 顧客別の提案資料 — 公開情報と自社の技術情報を組み合わせて作る資料

これらに共通するのは、材料(入力)がある程度そろっていて、最終的な成果物(出力)の書式がおおむね決まっている、という点です。

業務の3分解で見極める

どの業務から着手すべきかを判断する際は、業務を入力(INPUT)→ 処理(PROCESS)→ 出力(OUTPUT)に分解して考えます。

  • INPUT — 何を材料にするか(作業動画、写真、日報、過去の資料など)
  • PROCESS — 材料をどう加工するか(整理・分類・文章化・計算など)
  • OUTPUT — 最終的に何を作るか(形が決まっているか、案件ごとに変わるか)

出力の形が決まっていて、入力が毎回そろう業務は、完全な自動化が狙えます。入力はそろうが人の判断が必要な業務は、AIに下書きを作らせて人が確定する形になります。毎回ゼロから考える業務は、自動化の対象ではなく、思考を整理し加速する道具として使うのが現実的です。

実際に、こう進んだ例

自動車部品を製造する旭鉄工株式会社では、作業手順書の作成という業務を、この考え方で分解しました。作業動画と部品名を入力するだけで、AIが動画から画像を切り出し、手順書の下書きを自動生成する仕組みを構築。使い方だけでなく「作り方」までを研修で共有し、社内の誰もが作れる状態にしました。結果として、手順書の作成にかかる時間は数日から数時間に短縮され、研修参加者のGPTs作成成功率は95%、次回参加希望は79.7%でした(全4回のリピート研修)。

これは、1つの業務を分解し、完全自動化ではなく「下書きを自動生成し、熟練者が監修する」という現実的な到達点を選んだ例です。

製造AXの進め方

  1. 業務を1つ選ぶ — 出力の形が決まっている業務から着手する
  2. 入力・処理・出力に分解する — どこまでAIに任せられるかを見極める
  3. 小さく作って試す — 研修やPoCで、実際に動くものを1つ作る
  4. 使い方と作り方を共有する — 現場の誰もが使い、更新できる状態にする
  5. 次の業務に広げる — 定着した業務を起点に、対象範囲を広げていく
製造AXの進め方の5つのステップ。業務を1つ選ぶ、入力・処理・出力に分解する、小さく作って試す、使い方と作り方を共有する、次の業務に広げる
FIG.02製造AXの進め方

よくある失敗

製造AXでよくある失敗は、次のようなパターンです。

  • いきなり全社導入を狙う — 対象業務が広すぎて、誰も責任を持てず失敗する
  • ツール導入だけで終わる — 生成AIのアカウントを配っただけで、業務プロセスに組み込まれていない
  • 研修だけで終わる — 知識は増えたが、実際に現場で使われる仕組みが残らない
  • 情報システムの制約を後回しにする — 導入直前になって「社内PCで使えない」と分かる

これらはいずれも、業務を分解して1つずつ形にするというステップを飛ばしていることが原因です。

まとめ

製造AXとは、生成AIを使って製造業の業務プロセスそのものを変えていく取り組みです。DXがデジタル化・データ活用を中心に据えるのに対し、AXは判断や文章生成を伴う工程までを変革の対象に含みます。まずは自社の業務を「入力・処理・出力」に分解し、出力の形が決まっている業務を1つ選ぶところから始めてみてください。

TERRAISEでは、この考え方をもとにした製造業向けのハンズオン型AI研修と、実装までの伴走支援を行っています。

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TERRAISE代表 舟橋遼亮のポートレート

Supervised by — 監修

株式会社TERRAISE 代表取締役CEO 舟橋 遼亮

2025年2月に株式会社TERRAISEを創業。お茶の水女子大学 外部講師、Google AI Student Ambassador(2025年)を務める。上場企業や全国の高校などで、AIの活用を実際に指導している。

執筆:株式会社TERRAISE(生成AI研修 AX Academy・AI導入コンサル AX Compass・AI顧問・教育機関向けAI教育)。最終更新日:2026年9月26日

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