製造業の生成AI活用、何から始めるか(業務の3分解)

製造業で生成AIの活用が進まない理由と、何から手をつけるべきかを解説。業務を入力・処理・出力に分解する考え方と、実際の導入例を紹介します。

製造業の生成AI、何から始める?(製造業/95% 研修でのGPTs作成成功率)
Category
製造業
Updated
2026.09.26
Reading
約5分
Author
株式会社TERRAISE
Supervisor
舟橋 遼亮(代表取締役CEO)

「生成AIを使わないといけないのは分かっている。でも、何から手をつければいいか分からない」——製造業の経営者・DX担当者から、よくこの相談を受けます。この記事では、生成AIの活用が進まない典型的な理由と、実際に業務へ落とし込むための考え方を整理します。

「使っている」企業は86.4%。でも組織的な取り組みは進んでいない

総務省『令和8年版 情報通信白書』(2026年7月24日公表)によると、業務で生成AIを利用している企業は86.4%にのぼります。2024年度の55.2%から、わずか2年で31.2ポイント伸びました。個人がChatGPTなどを使っている状態を含めれば、多くの企業がすでに「使っている」段階にあります。

一方で、同じ調査では「組織的な取組はない」と答えた日本企業が約27%にのぼります(米国は1.4%)。ツールは現場に入った。しかし、会社として使い方を決め、業務プロセスに組み込むところまでは進んでいない——これが、多くの製造業が置かれている状況です。

生成AI活用が進まない、よくある理由

現場に入ってヒアリングすると、うまくいかない理由は「ツール選び」ではないことがほとんどです。典型的には、次の3つに整理できます。

  • 知識の壁 — 研修は受けた。でも、翌週には使い方を忘れている
  • 実装の壁 — 誰かがツールを作った。でも、業務プロセスに組み込まれておらず、誰も使っていない
  • 定着の壁 — 一部の人だけが使っていて、部署全体の業務は変わっていない

研修だけ、開発だけ、導入だけ——どれか1つの支援では、この3つの壁を越えきれません。生成AIの情報は1ヶ月単位で更新されるため、単発の支援では現場が追いつかないのです。

出発点は「業務の3分解」

どこから手をつけるべきか迷ったときにおすすめしているのが、業務を入力(INPUT)→ 処理(PROCESS)→ 出力(OUTPUT)の3つに分解して考える方法です。

  • INPUT(入力): 何を材料にするか。作業動画、写真、日報、過去の資料、測定値など
  • PROCESS(処理): 材料をどう加工するか。整理、分類、文章化、計算など
  • OUTPUT(出力): 最終的に何を作るか。形が決まっているか、案件ごとに変わるか

この3つに分けてみると、AIに渡せる工程と、人が判断すべき工程がはっきり見えてきます。

業務を入力・処理・出力の3つに分解する図。入力は作業動画・写真・日報・過去の資料・測定値、処理は整理・分類・文章化・計算、出力は最終的に何を作るか
FIG.01業務の3分解(入力・処理・出力)

判断基準は2つ

自動化できるかどうかは、次の2点で見極められます。

観点 内容
① 出力(成果物)の形が決まっているか テンプレート・書式が固定されているほど自動化しやすい
② 必要な入力が毎回そろうか 撮影・記録するだけで材料がそろう業務ほど扱いやすい

両方を満たす業務は、完全な自動化が狙えます。たとえば、点検記録から月次の帳票を作る、受注メールから注文データを起こす、といった業務です。

入力はそろうが人の判断が必要な業務(作業手順書の更新、不良対策書、顧客別の提案資料など)は、AIに下書きを作らせ、人が確定するという形に落ち着きます。毎回ゼロから考える業務(新規事業の検討、個別の経営判断など)は、自動化の対象ではなく、思考を整理し加速する道具として使うのが現実的です。

到達点は3段階で考える

  1. 完全自動化 — 出力の形が決まっている業務
  2. 下書きを自動生成+人が監修 — 入力はそろうが判断が要る業務
  3. 思考を加速する道具 — 毎回ゼロから考える業務

すべての業務をいきなり自動化しようとしないことが、現場に定着させるコツです。まず1つ、完全自動化か下書き自動生成が狙える業務を選び、「AIでできた」という事実を社内に作ることをおすすめします。

到達点の3段階。出力の形が決まっている業務は完全自動化、入力はそろうが判断が要る業務は下書きを自動生成して人が監修、毎回ゼロから考える業務は思考を加速する道具として使う
FIG.02到達点は3段階

実際に、こう動いた例

自動車部品を製造する旭鉄工株式会社では、作業手順書の作成という業務をこの考え方で分解しました。作業動画と部品名を入力するだけで、AIが動画から画像を切り出し、手順書の下書きを自動生成する仕組みを構築。使い方だけでなく「作り方」までを研修で共有し、社内の誰もが作れる状態にしました。結果として、手順書の作成にかかる時間は数日から数時間に短縮され、研修参加者のGPTs作成成功率は95%、次回参加希望は79.7%でした(全4回のリピート研修)。

製造業の協力会社団体である豊田合成協和会では、企業規模も職種も異なる46名が同時に参加する研修も実施しています。業務の分解という考え方は、企業規模や業種が違っても共通して使えます。

助成金の活用も選択肢に

研修規模を広げたい場合、人材開発支援助成金などの制度が使える場合があります。製造業A社(社名は非公開)では、19名・計15時間の生成AI活用研修に、人材開発支援助成金(リスキリング支援コース)を活用して実施した例があります。

ただし、助成金の要件・助成率は年度・企業規模・雇用保険の加入状況等により異なります。最新の情報は、必ず厚生労働省・労働局の公表資料でご確認ください。

まとめ

製造業の生成AI活用が進まない最大の理由は、ツールの性能ではなく、業務プロセスへの組み込みと定着の仕組みが不足していることです。まずは自社の業務を「入力・処理・出力」に分解し、出力の形が決まっている業務を1つ選ぶところから始めてみてください。

TERRAISEでは、この考え方をもとにした製造業向けのハンズオン型AI研修と、実装までの伴走支援を行っています。

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TERRAISE代表 舟橋遼亮のポートレート

Supervised by — 監修

株式会社TERRAISE 代表取締役CEO 舟橋 遼亮

2025年2月に株式会社TERRAISEを創業。お茶の水女子大学 外部講師、Google AI Student Ambassador(2025年)を務める。上場企業や全国の高校などで、AIの活用を実際に指導している。

執筆:株式会社TERRAISE(生成AI研修 AX Academy・AI導入コンサル AX Compass・AI顧問・教育機関向けAI教育)。最終更新日:2026年9月26日

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