「うちの高校でも生成AIの授業をやりたい」という相談を受けることが増えました。DXハイスクールの指定を受けた学校、探究学習の一環として検討している学校、進路指導やキャリア教育に取り入れたい学校——目的はさまざまですが、準備を始める前に決めておくと迷いが少なくなるポイントが5つあります。

1. 目的を決める
生成AIの授業といっても、目的によって設計はまったく変わります。
- 情報の授業として体系的に扱う — 生成AIの仕組みや使い方を、教科の中で系統立てて教える
- 探究学習の道具として使う — 生徒が自分のテーマを深めるために、調べる・整理する道具として活用する
- キャリア教育に組み込む — 将来の進路や仕事を考えるプロセスに、生成AIを使った疑似体験を組み込む
岩倉高等学校のキャリアデザインコースでは、言語化→スキル習得→社会実装という3つのターム(学期区分)でカリキュラムを設計しています。1学年200名×年間30コマという規模で、キャリア教育の一部として生成AIを位置づけている例です。目的を最初に決めておくことで、カリキュラムの骨格が定まります。
2. 対象学年・規模を決める
全学年一斉に始めるのか、特定のコース・学年から試すのかも、早い段階で決めておくべきことです。いきなり全校展開すると、教員の負担や機材の準備が追いつかなくなることがあります。まず1学年、あるいは1コースで試し、うまくいった部分を翌年度に広げる進め方が現実的です。
3. 生徒の情報をどう扱うか
生成AIの授業を設計するうえで、避けて通れないのが「生徒の情報をどこまで外部のサービスに渡してよいか」という論点です。
- 公開情報や一般的な学習内容を扱うだけであれば、クラウドの生成AIサービスで問題ないことが多いです
- 生徒の成績データや個人情報を含む内容を扱う場合、あるいは自治体・学校の規程で外部送信が制限されている場合は、ローカルLLM(ネットを介さない校内専用AI環境)が選択肢になります

惺山高等学校(山形県)では、NVIDIA DGX Sparkとオープンモデルを使い、日本初となる高校内ローカルLLM環境をサードウェーブと共同で構築しました。「クラウドが使えないから諦める」のではなく、情報の扱い方に合わせて環境を選ぶという考え方です。
4. 教員の体制をどうするか
生成AIの授業を進めるうえで、生徒よりも先に教員自身が生成AIに慣れておく必要があります。「教員研修をどのタイミングで、誰向けに実施するか」を決めておくと、授業本番でのつまずきを減らせます。
教員向けの研修だけを先行して実施するケースもあります。TERRAISEでも、教員向けのAI活用研修を先行して実施した例があります。授業を一気に始める前に、教える側の土台を作るという進め方です。
5. 評価・継続の仕組みをどうするか
単発のイベントで終わらせるのか、継続的なカリキュラムとして位置づけるのかも決めておくべき点です。継続する場合は、誰が翌年度に向けて内容を見直すのか、評価をどう行うのかをあらかじめ決めておくと、担当教員が異動した場合にも引き継ぎやすくなります。
大学レベルでは、お茶の水女子大学が生成AIを用いた課題解決と倫理をテーマにした正規講義を、学部・大学院で通算6単位担当しています。単発の講演ではなく、単位認定を伴う継続的なカリキュラムとして位置づけられている例です。
まとめ
高校で生成AIの授業を始めるときは、次の5つを先に決めておくと、準備がスムーズに進みます。
- 目的(探究学習/キャリア教育/情報の授業として体系的に扱うか)
- 対象学年・規模
- 生徒の情報の扱い方(クラウドかローカルLLMか)
- 教員の体制(研修の要否)
- 評価・継続の仕組み
TERRAISEでは、こうした設計の相談から、教員研修、カリキュラムの共同開発、ローカルLLM環境の構築まで、高校・大学・教育委員会向けに一貫して支援しています。
