補助金と助成金の違い。AI研修とAI導入では、どちらを使えばいい?

補助金と助成金は、所管・審査・受付期間・お金の流れが違います。AI研修なら助成金、AIツールやシステムの導入なら補助金、と使い分ける考え方を、公的な制度資料(2026年9月時点)をもとに具体例つきで解説します。

補助金と助成金、AI研修ならどっち?(助成金・補助金/2026年9月時点/4つの違いを比較)
Category
助成金・補助金
Updated
2026.09.26
Reading
約9分
Author
株式会社TERRAISE
Supervisor
舟橋 遼亮(代表取締役CEO)

結論:AI研修(人を育てる費用)なら助成金、AIツールやシステム(モノ・仕組みへの投資)なら補助金、と考えると整理しやすくなります。 助成金は要件を満たせば原則として支給されるのに対し、補助金は審査で採択されないと受け取れません。どちらも原則は後払いで、事前の申請が必要です。

この記事では、AIの研修と導入でよく使われる制度を例に、補助金と助成金の違いと使い分けを整理します。制度の内容は2026年9月時点で公式資料を確認したものです。最新の要件は、各制度の公式ページで確認してください。

制度ごとの詳しい内容は生成AI研修・AI導入に使える助成金・補助金のまとめから各記事へ進めます。

助成金は厚生労働省系で、従業員の訓練など人に関わる取り組みが対象、要件を満たせば予算の範囲内で支給され、年間を通じて使えるものが多い。補助金は経済産業省・中小企業庁系で、ITツールや設備などの投資が対象、審査で採択された事業者だけが受け取れ、公募回ごとの締切がある
FIG.01助成金と補助金の違い

補助金と助成金は何が違う?

名前だけで仕組みが決まるわけではないので、最終的には制度ごとに確認が必要です。そのうえで、企業がAIの研修や導入で検討する代表的な制度に限ると、次のような違いがあります。

助成金(例:人材開発支援助成金) 補助金(例:デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金)
主な所管 厚生労働省(窓口は都道府県労働局) 経済産業省・中小企業庁(窓口は各事務局)
財源 雇用保険料(人材開発支援助成金のパンフレットに明記) 国の予算事業(事業ごとに予算が組まれる)
もらえるか 要件を満たし、審査を通れば予算の範囲内で支給 審査で採択された事業者だけ。申請しても不採択がある
受付 計画届・支給申請の期限を守れば、年間を通じて使えるものが多い 公募回ごとの締切がある
主な対象 従業員の訓練、雇用、賃上げなど「人」に関わる取り組み ITツール、設備、システムなど「投資」
手続きの専門家 社会保険労務士(申請手続き業務は社労士の独占業務) 事業者と一緒に申請する登録事業者(IT導入支援事業者など)や支援機関

雇用関係の助成金は「雇用保険料で運営されているため、受給資格が定められています」と人材開発支援助成金のパンフレットにあり、同じ資料に「予算の範囲内で支給されるもの」とも書かれています。一方、省力化投資補助金の公募要領では、事業計画書を外部有識者の審査委員会が評価し、「より優れた事業計画書を提出した者」を採択するとしています。この「審査で選ばれるかどうか」が、実務上もっとも大きな違いです。

どちらも共通していることは?

違いばかりが語られがちですが、AIの研修や導入で使うときに共通する注意点もあります。

1. 事前の手続きが必要

  • 人材開発支援助成金:訓練開始日の6か月前から1か月前までに、職業訓練実施計画届を労働局へ提出
  • デジタル化・AI導入補助金:交付決定前に契約・発注したITツールは対象外
  • 省力化投資補助金:交付決定前に発生した経費は、いかなる理由でも対象外

「研修が終わってから」「導入してから」では間に合いません。検討を始めた時点で、制度の期限から逆算します。

2. 原則は後払い

助成金は、訓練経費を支払い終えてから支給申請します。補助金は、導入・支払いを済ませて実績報告を出し、金額が確定してから交付されます。いずれも、いったん全額を自社で支払う前提で資金繰りを考える必要があります。

3. 賃上げや生産性の目標がつくことが多い

デジタル化・AI導入補助金は労働生産性の3年間の計画が必須で、補助額150万円以上では賃上げ計画も必須です。省力化投資補助金(一般型)は、労働生産性+4.0%、給与支給総額+3.5%などが基本要件で、未達なら返還を求められることがあります。人材開発支援助成金にも、賃金を上げた場合に助成率が上がるコース(人材育成支援コースなど)や、賃上げを要件にした加算(事業展開等リスキリング支援コースの設備投資加算)があります。

AI研修・AI導入では、どれを使う?

目的別に、2026年9月時点で候補になる主な制度を並べます。

やりたいこと 候補になる制度 種類 ポイント
社員に生成AIの研修を受けさせたい 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) 助成金 10時間以上のOFF-JT。中小企業は経費75%+賃金1時間1,000円。令和8年度末までの時限措置
短時間の研修を受けさせたい(東京都内の中小企業) 東京都「DXリスキリング助成金」(東京しごと財団) 自治体の助成金 1研修3時間以上10時間未満。経費の3/4、1人1研修7.5万円・1社100万円が上限
生成AIのツール・クラウドサービスを導入したい デジタル化・AI導入補助金2026 補助金 登録されたITツールをIT導入支援事業者から導入。通常枠1/2以内・最大450万円
AIを使った自社専用の設備・システムを作りたい 中小企業省力化投資補助金(一般型) 補助金 オーダーメイド設備が対象。機械装置・システム構築費が必須
最低賃金に近い賃金の従業員がいて、賃上げと設備投資を同時に行う 業務改善助成金 助成金 事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上の設備投資等を行う場合。対象事業者と申請期限が限られる
高校で生成AIの授業・環境を整えたい DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業) 国の補助金(学校設置者向け) 教育委員会・学校法人が申請。定額補助

東京都のDXリスキリング助成金は、国や地方公共団体から同じ研修について助成を受けていないことが要件です。業務改善助成金(令和8年度)は、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であることなどが対象要件で、申請期間は地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い方までとされています。どちらも詳細は公式ページで確認してください。

組み合わせるときの考え方

AIの導入を本気で進めると、「仕組みを入れる」と「使える人を育てる」の両方が必要になります。このとき、経費を分けて、それぞれに合う制度を当てるのが基本です。

たとえば、製造業で検査記録の作成にAIを使う場合、次のように分けて考えられます。

  1. 業務の分解:どの工程をAIに任せ、どこを人が判断するかを決める(制度に頼らず、まず自社で決める部分)
  2. 仕組みの導入:自社専用のシステムを作るなら省力化投資補助金、登録ツールで足りるならデジタル化・AI導入補助金
  3. 使う人の研修:職務に直結する10時間以上の研修なら人材開発支援助成金
組み合わせの考え方。まず業務を分解してAIに任せる工程を自社で決め、仕組みの導入には補助金、使う人の研修には助成金を当てる。同じ経費を2つの制度で受け取ることはできない
FIG.02経費を分けて、それぞれに合う制度を当てる

注意したいのは、同じ経費を2つの制度で受け取ることはできない点です。人材開発支援助成金のパンフレットには、同じ訓練・経費・賃金に対して複数の助成制度を使う場合は併給できないことがあると書かれています。厚生労働省は、AI研修とAIツールの導入をセットにして、ツールの費用まで研修費として申請できるとうたう営業にも注意を促しています(ツールの導入費用は研修の助成の対象外)。

よくある誤解

  • 「助成金は必ずもらえる」:要件を満たしていても、計画どおりに実施されなかった時間や、受講率が足りない受講者は対象外になります。計画届を出したことで支給が確約されるわけではありません
  • 「補助金で実質タダになる」:補助率は1/2や2/3が中心で、残りは自己負担です。人材開発支援助成金についても、厚生労働省は「受講料が実質無料で利益も出る」という営業は仕組み上あり得ないとしています
  • 「申請は研修会社やベンダーに丸投げできる」:助成金の申請手続きは社会保険労務士の独占業務です。補助金も、申請者はあくまで自社で、事業計画の内容に責任を持つのは自社です

TERRAISEがお手伝いできること

TERRAISEは、生成AIの研修(AX Academy)、AI導入のコンサルティング(AX Compass)、AI顧問を提供しています。制度との関わりでは、次の部分をお手伝いします。

  • どの業務にAIを使うかの整理(業務を入力・処理・出力に分ける)
  • 助成金の条件に沿った研修カリキュラム・時間割・実施記録の整備。製造業A社(社名は非公開)では、19名・計15時間(3日間)の研修で人材開発支援助成金(リスキリング支援コース)を活用しました
  • 研修後に、現場でAIが使われ続けるための伴走

助成金の申請手続きは企業ご自身または社会保険労務士が、補助金の申請は各制度の登録事業者・支援機関とともに企業ご自身が行います。

どの制度を探せばよいか分からない場合は、AI研修・AI導入に使える公的支援の探し方もご覧ください。研修の助成金については助成金を活用した生成AI研修で詳しく紹介しています。60分の無料相談では、やりたいことをお聞きして、研修と導入のどちらから手をつけるかを一緒に整理します。会社紹介資料のご請求もどうぞ。

出典(2026年9月26日確認)

TERRAISE代表 舟橋遼亮のポートレート

Supervised by — 監修

株式会社TERRAISE 代表取締役CEO 舟橋 遼亮

2025年2月に株式会社TERRAISEを創業。お茶の水女子大学 外部講師、Google AI Student Ambassador(2025年)を務める。上場企業や全国の高校などで、AIの活用を実際に指導している。

執筆:株式会社TERRAISE(生成AI研修 AX Academy・AI導入コンサル AX Compass・AI顧問・教育機関向けAI教育)。最終更新日:2026年9月26日

よくあるご質問

Q01補助金と助成金の一番の違いは何ですか?

厚生労働省の雇用関係助成金は、雇用保険料を財源とし、要件を満たして手続きをすれば予算の範囲内で支給されるものです。経済産業省・中小企業庁系の補助金は、公募期間内に事業計画を出し、審査で採択された事業者だけが受け取れます。

Q02AI研修にはどちらを使いますか?

社員研修の費用は、厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コースなど)が中心です。自治体によっては独自の研修助成もあります。研修の開始前に計画届や事前申請が必要です。

Q03AIツールやAIシステムの導入にはどちらを使いますか?

登録されたITツールを導入するならデジタル化・AI導入補助金、自社の業務に合わせたAIの設備・システムを作るなら中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になります。いずれも交付決定前の契約は対象外です。

Q04補助金と助成金は併用できますか?

経費を分ければ、研修は助成金、ツールやシステムは補助金、と組み合わせられる場合があります。ただし、同じ経費で重複して受け取ることはできません。制度ごとに併給の扱いが違うため、各窓口に確認してください。

Q05補助金や助成金はいつ受け取れますか?

どちらも原則として後払いです。助成金は研修費を支払い終えてから支給申請し、補助金は導入と支払いを済ませて実績報告を出した後に交付されます。費用はいったん自社で全額を負担します。

まず、御社の「あの業務」を、ひとつ教えてください。

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