結論:AIを使ったシステムや設備も、中小企業省力化投資補助金の対象になり得ます。 ただし、対象になるのは「人手不足を解消するために、自社の業務に合わせて設計した設備・システム」です。生成AIサービスの利用料や、パッケージソフトを単体で導入するだけの計画は対象外です。
この記事は、中小企業省力化投資補助金の公式サイトと一般型 第8回公募要領をもとに、2026年9月時点の内容で整理しています。申請前に最新の公募要領を必ず確認してください。
補助金・助成金の全体像は生成AI研修・AI導入に使える助成金・補助金のまとめで紹介しています。
省力化投資補助金とは?2つの型の違い
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業が、IoTやロボットなどの省力化につながる設備・システムを導入する費用の一部を補助する制度です。申請の型は2つあります。
| カタログ注文型 | 一般型 | |
|---|---|---|
| 何を導入するか | 公式カタログに登録された省力化製品 | 自社の業務に合わせて設計する設備・システム(オーダーメイド設備) |
| 申請方法 | 販売事業者と共同で申請 | 事業者が事業計画書を作って申請 |
| 補助率 | 1/2以下 | 中小企業1/2(特例で2/3)、小規模企業者・小規模事業者、再生事業者2/3 |
| 補助上限 | 従業員5名以下200万円、6〜20名500万円、21名以上1,000万円(賃上げ目標を達成する場合はそれぞれ300万円、750万円、1,500万円) | 従業員数に応じて750万円〜8,000万円(大幅賃上げ特例で最大1億円) |
| 受付 | 随時 | 公募回ごと(第8回は2026年10月16日17:00締切) |
カタログ注文型の上限額は、2026年3月19日以降の申請に適用される金額です。AIを使った独自のシステムを組むなら一般型、カタログに載っている製品で足りるならカタログ注文型、という分け方になります。カタログにどの製品が載っているかは、公式サイトの製品カタログで確認してください。
一般型で「対象になる」AI活用とは?
一般型の公募要領は、対象となる「オーダーメイド設備」を次のように定義しています。
ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム(ロボットシステム等)
つまり、AIを使うこと自体は問題ありません。問われるのは「自社のどの工程を、どれだけ自動化・省力化するのか」です。たとえば次のような計画は、この定義に沿って検討できます。
- カメラとAIの画像判定を組み合わせ、目視で行っていた外観検査を自動化するシステム
- 受注データから生産計画の案を自動で組み立てる、自社の工程に合わせたシステム
- 紙の伝票を読み取り、基幹システムへの転記を自動化する仕組み
どれも「今は人が何時間かけているか」と「導入後に何時間になるか」を数字で示せることが前提です。
省力化指数とは?
公募要領では、省力化の効果を「省力化指数」で示すことになっています。
省力化指数 =(設備導入で削減される業務に要していた時間 − 導入後に発生する業務の時間)÷ 設備導入で削減される業務に要していた時間
たとえば月200時間かかっていた検査が、導入後は確認作業の月40時間になるなら、(200 − 40)÷ 200 = 0.8 です。AIの判定結果を人が確認する時間も「導入後に発生する業務」として正直に数える必要があります。

「対象にならない」ものは?
公募要領に書かれている対象外の例のうち、AI関連で気をつけたいものを挙げます。
| 対象外になるもの | AI導入での例 |
|---|---|
| 汎用設備、パッケージソフト等のオーダーメイド性の無い設備・システムを単体で導入する事業 | 生成AIのサービスに申し込むだけ、市販ソフトを1本入れるだけ。ただし複数を組み合わせて高い省力化効果を出す場合は対象になり得る |
| 交付決定前に発生した経費 | 採択を待たずにシステム会社と契約・発注した費用。「いかなる理由であっても事前着手は認められません」と明記 |
| 既存システムやソフトウェアのバージョンアップ・改修費用 | すでに使っている社内システムにAI機能を足すだけの改修。ただし、補助事業で新しく導入するシステムと連携させるための改修は対象 |
| 自社の人員で開発する場合の人件費 | 社内のエンジニアが自分でAIの仕組みを作る費用 |
| 事務用のパソコン・プリンタ・文書作成ソフト・スマートフォン・タブレット等 | 生成AIを使うためのPCの購入 |
| 事業の主たる課題の解決そのものを他者へ外注・委託する事業 | 業務そのものを外部に丸ごと任せる計画 |
| 将来の外販や、利用者に有償で提供するシステムの開発 | 自社で作ったAIツールを他社に売る前提の開発 |
このほか、機械装置・システム構築費以外の経費(外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費など)は、合計500万円(税抜)までが上限です。システム構築費を計上する場合は、積算根拠が明確な見積書と仕様書が求められ、「システム開発一式」のような見積もりは認められません。見積もりは原則として2者以上から取ります。ソフトウェア投資やシステム開発の案件は、オンラインでの口頭審査の対象になることもあります。
一般型の主な要件は?
| 要件 | 内容(2026年9月時点) |
|---|---|
| 労働生産性 | 年平均成長率+4.0%以上 |
| 給与支給総額 | 年平均成長率+3.5%以上 |
| 事業所内最低賃金 | 事業実施都道府県の最低賃金+30円以上 |
| 事業実施期間 | 交付決定日から18か月以内 |
| 申請 | GビズIDプライムアカウントが必要 |
給与支給総額の目標が達成できない場合は、達成率に応じて補助金の返還を求められます。天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は除かれます。補助金は事業が終わって実績報告を出し、金額が確定した後の精算払いです。導入費用はいったん自社で全額を支払う必要があります。
また、応募時に事業計画書の作成を支援した者は、専門家経費の補助対象外とされています。計画づくりを手伝ってもらう相手と、事業の中で専門家として関わってもらう相手の関係は、先に整理しておきましょう。
第8回の締切は?
一般型の第8回は、2026年9月18日(金)から10月16日(金)17:00まで応募申請を受け付けています(公式サイトのお知らせ、2026年9月26日確認)。事業計画書の作成、見積書・仕様書の準備、GビズIDプライムの取得を考えると、ここから準備を始めて間に合うかは慎重に判断してください。次の回の日程は公式サイトで発表されます。
申請の前に、業務を分解しておく
省力化投資補助金の審査では、どの工程の時間がどれだけ減るのかを具体的に説明する必要があります。ここで役に立つのが、業務を入力 → 処理 → 出力に分ける考え方です。
たとえば外観検査なら、入力(製品の画像)、処理(良品・不良品の判定)、出力(判定結果の記録と不良品の仕分け)に分けられます。出力の形が決まっている工程は自動化しやすく、判断の基準があいまいな工程は「AIが下書きを出し、人が最終判断する」形にとどめる、といった線引きができます。この線引きが、そのまま省力化指数の根拠になります。

TERRAISEは、製造業の現場でこの業務の分解から、AIを使った仕組みの試作、使い方と作り方の研修までを行っています。旭鉄工株式会社では、作業動画と部品名を入れると、AIが画像を切り出して作業手順書の下書きを自動で作る仕組みを構築し、手順書の作成時間を数日から数時間に短縮しました。
なお、仕組みを使いこなすための社員研修は、この補助金ではなく人材開発支援助成金で検討できる場合があります。同じ経費を複数の制度で受け取ることはできないので、設備・システムの費用と研修の費用は分けて考えます。
まとめ
- AIを使った自社専用の設備・システムは、一般型の対象になり得る
- 生成AIサービスの利用料だけ、パッケージソフトの単体導入だけ、既存システムの改修は対象外
- 交付決定前の契約・発注は、理由を問わず対象外
- 労働生産性+4.0%、給与支給総額+3.5%、最低賃金+30円などの要件があり、未達なら返還の可能性がある
- 第8回(一般型)は2026年10月16日17:00締切
ツールの導入費用ならデジタル化・AI導入補助金2026、研修なら助成金、と目的によって合う制度が変わります。違いは補助金と助成金の違いで整理しています。
製造業でAIをどの工程に使うか迷っている場合は、製造業向けのご案内をご覧ください。60分の無料相談では、業務をひとつ挙げていただければ、その場で入力・処理・出力に分解して当たりをつけます。会社紹介資料もお送りできます。
出典(2026年9月26日確認)
- 中小企業省力化投資補助金事務局「中小企業省力化投資補助金」(お知らせ:一般型第8回の受付開始)
- 同「一般型 概要」
- 同「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」(PDF)
- 同「カタログ注文型 概要」
